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深刻な人手不足はこう解消する!中小建設業のためのICT施工・省人化技術導入ステップ

本記事では、中小建設業の方が、DXを推進するための具体的なステップと、そのメリットを解説します。


ICT施工・省人化技術導入の全体像と背景

従来の労働集約型の業務プロセスでは、持続的な事業運営が困難になりつつあります。ICT施工や省人化技術の導入は、必須の戦略になると考えています。

2024年問題、人手不足がもたらす現場課題

熟練技術者の高齢化と若年層の入職者減少により、経験豊富な人材が不足。結果として、一人あたりの業務負担が増大し、長時間労働が常態化する傾向にあります。技術継承も滞り、品質の維持や安全管理にも影響を及ぼしかねません。また、2024年問題が間近に迫る中、労働時間の上限規制は、限られた人員での業務遂行をさらに困難にしています。

中小建設業でのDX遅延要因

ICT施工や省人化技術の導入に遅れが見られることがあります。多くの場合、初期投資への懸念、専門知識を持つ人材の不足、そして日々の業務に追われ、新しい技術導入まで手が回らないという現状が存在します。また、どのような技術を導入すれば良いのか、具体的なメリットがイメージしにくいといった情報不足も、DX推進の障壁となっています。

政策支援と補助金制度の活用

国や地方自治体は、建設業界のDX推進を強く後押ししています。ICT施工や省人化技術の導入を支援するための様々な補助金・助成金制度が用意されています。「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」などは、聞いたことがあるのではないでしょうか。初期投資の負担を軽減し、中小企業が新しい技術に挑戦しやすい環境を整えています。

ICT施工・省人化技術の種類と可能性

ICT施工とは、測量から設計、施工、検査までの一連のプロセスでICT(情報通信技術)を活用するものです。ドローン測量による3次元データ取得、BIM/CIMを用いた設計、そしてICT建機による自動制御施工などが挙げられます。省人化技術としては、ロボットによる自動化、IoTセンサーによる現場モニタリングなどがあります。

成功要因と導入ロードマップ

I導入を成功させるには、明確な目的意識と段階的なロードマップが必要です。まず、自社の現状課題を正確に把握し、どの技術が最も効果的かを見極めます。次に、小規模な実証実験(PoC)から始め、徐々に適用範囲を広げていくのが賢明です。従業員の理解と協力も不可欠なため、導入メリットを丁寧に伝え、研修を通じてスキルアップを促すことが重要です。


基礎準備フェーズ:現状把握と戦略設計

現場業務プロセスの可視化と課題抽出

最初のステップは、現在の現場業務プロセスを詳細に可視化することです。誰が、いつ、何を、どのように行っているのかをフローチャートなどで整理し、無駄な作業、非効率な情報共有、ボトルネックとなっている箇所を洗い出します。例えば、手書き日報の転記作業、電話での進捗確認、紙の図面を探す時間など、日々の業務に潜む課題を具体的に特定することが重要です。

小規模実証から始める PoC の設計

新しい技術の導入には、不安がつきものです。そこで有効なのが、小規模な現場や特定の業務に限定して試行する「PoC(Proof of Concept:概念実証)」です。例えば、特定の測量業務にドローンを導入し、その効果や課題を検証します。PoCを通じて、従業員の抵抗感を和らげ、導入メリットを具体的に示すことができます。成功体験を積み重ねながら、徐々に適用範囲を広げていきましょう。

技術選定:ハード/ソフトの評価基準

ICT施工や省人化技術には、様々な種類のハードウェア(ICT建機、ドローンなど)とソフトウェア(施工管理システム、BIM/CIMソフトなど)があります。自社の課題解決に最も適した技術を選定するためには、次の基準で評価しましょう。

求める機能が備わっているか
操作性はどうか
既存システムとの連携は可能か
導入費用やランニングコストはどうか

といった観点での比較が不可欠です。

人材育成・リテラシー強化計画

新しい技術を導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ意味がありません。従業員への教育とデジタルリテラシーの強化は、DX推進に不可欠です。システムベンダーが提供する研修や、外部のセミナーを活用し、段階的にスキルアップを図る計画を立てましょう。特に、若手技術者には、新しい技術への適応力が高い傾向があるため、積極的に研修に参加してもらうのが効果的です。

投資計画と予算配分設計

初期投資が必要です。その投資は、長期的に見れば業務効率化や生産性向上に繋がり、回収できるものです。投資計画を立てる際は、補助金・助成金制度の活用を視野に入れ、初期費用を抑える工夫をしましょう。


導入実装フェーズ:ICT機器・システム導入と統合

基礎準備が整ったら、いよいよICT機器やシステムの導入と、既存業務への統合を進めます。このフェーズでは、具体的な機器の選定から、現場での運用ルールの整備まで、多岐にわたる作業が発生します。

測量・点群取得・3Dモデル化の導入

ICT施工の基盤となるのは、正確な3次元データです。まずは、ドローン測量やレーザースキャナーを導入し、現場の地形を点群データとして取得する仕組みを構築しましょう。取得した点群データから3Dモデルを生成し、設計データと連携させることで、測量作業の効率を劇的に高められます。これにより、手作業での測量にかかっていた時間を大幅に短縮できます。

ICT建機(マシンコントロール/マシンガイダンス)導入

3次元データを基に、ICT建機(マシンコントロール、マシンガイダンス)を導入します。マシンコントロール対応の建機は、3次元データをもとにブレードやバケットを自動制御するため、熟練オペレーターでなくても高精度な施工が可能です。マシンガイダンス方式は、オペレーターがモニターを見ながら操作しますが、3次元データが表示されるため、経験の浅いオペレーターでも正確な作業ができます。導入する建機は、自社の工事内容や予算に合わせて選定しましょう。

現場データ連携:クラウド・通信インフラ設計

現場で取得したデータやICT建機の稼働状況をリアルタイムで共有できる環境が必要です。クラウドサービスを導入し、インターネット回線などの通信インフラを整備しましょう。現場と事務所が離れていても、クラウド上でデータを一元管理することで、情報共有のタイムラグをなくし、迅速な意思決定が可能になります。

運用フロー設定と現場運用ルール整備

新しいICT機器やシステムを導入したら、それに合わせた運用フローと現場運用ルールを明確に定めることが重要です。誰が、いつ、どのようにデータを入力し、誰がどのように確認・承認するかといった手順を文書化し、関係者全員に周知徹底しましょう。ルールが不明確だと、導入しても活用されない可能性があります。定期的な見直しも行い、運用を継続的に改善していく意識が大切です。

テスト運用と段階展開戦略

本格導入の前に、まずは小規模な現場や特定の業務でテスト運用を行いましょう。テスト運用を通じて、システムの使い勝手や、現場での課題点を洗い出します。従業員からのフィードバックを積極的に収集し、必要に応じてシステムの設定や運用ルールを改善しましょう。テスト運用で得られた知見を活かし、段階的に導入範囲を広げていくことで、スムーズなDX推進が可能になります。


定着・拡張フェーズ:運用改善と効果最大化

このフェーズでは、データ活用やAIの導入を通じて、さらなる価値創造を目指します。

KPI/効果測定とフィードバックループ構築

導入したICT施工や省人化技術が、実際にどの程度の効果を生み出しているかを客観的に評価するため、KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に測定しましょう。例えば、測量時間の短縮率、作業工数の削減率、出来形管理の精度向上率などが挙げられます。測定結果を分析し、改善点があれば運用フローやシステム設定にフィードバックする「フィードバックループ」を構築することが、継続的な効果向上に繋がります。

現場支援と運用エスカレーション体制

円滑に活用するためには、現場従業員への継続的な支援が不可欠です。システムの使い方に関する疑問や、トラブルが発生した際に、迅速に対応できる「運用エスカレーション体制」を構築しましょう。社内に専門のサポート担当者を置いたり、システムベンダーのサポート窓口と連携したりすることで、現場での問題を早期に解決し、システム活用を促進できます。

運用負荷低減(自動化・AI支援導入)

一時的に現場の運用負荷を増やす可能性があります。負荷を低減するため、業務の自動化やAI支援の導入を検討しましょう。AIが3次元データから出来形管理のレポートを自動生成したり、ロボットが単調な作業を自動で行ったりすることが考えられます。これにより、現場の従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。

データ利活用による追加価値創出

これらの集めたデータは、企業の重要な資産となります。分析することで、どのような工事で効率が良いか、どの建機が最も生産性が高いかといった知見を得られます。得られた知見は、次期プロジェクトの計画立案や、発注者への提案、協力会社との交渉など、様々な場面で活用でき、新たなビジネス価値を創出することが可能です。

将来展望:無人施工・ロボット導入への拡張

将来的な「無人施工」や「ロボット導入」への布石となります。AIによる高度な自動制御技術や、現場ロボットの開発が進むことで、危険な作業や過酷な環境での作業を人に代わってロボットが行う時代が現実味を帯びてきています。


まとめ:ICT施工・省人化技術で中小建設業の未来を切り拓く

戦略的に導入することで課題を克服し、企業の競争力を高めることが可能です。重要なのは、段階的な導入ステップを踏み、従業員の理解と協力を得ながら、運用を定着させることです。

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