建設土木DXに関する記事をお届けします

ICT施工と連携する運行管理:ダンプの稼働率を最大化する秘策について

今回は、ICT施工運行管理を上手く組み合わせることで、ダンプの稼働率を最大化できるのでは、についてまとめました。


ICT施工と運行管理を組み合わせる「意義と背景」

建設現場におけるICT施工の導入が進む一方で、土砂や資材の運搬といった周辺業務の効率化は依然として課題です。ICT施工と運行管理を組み合わせることは、工事全体の最適化に繋がる可能性があります。

ICT施工原則化と運搬プロセスとの整合性

国土交通省が推進するICT施工の原則化は、設計から測量、施工、検査までの一連のプロセスを3次元データで連携させることを目指しています。ICT建機が3次元データに基づいて正確な掘削や盛土を行う一方で、そこから発生する土砂の運搬プロセスが非効率であれば、全体の効果は半減します。

国交省・i-Construction 2.0 の運行データ戦略

i-Construction 2.0」は、建設プロセス全体のDXを目指しています。その中核には、現場で発生する様々なデータを連携・活用する「運行データ戦略」が含まれます。ダンプトラックの運行データも、ICT施工の3次元データと連携させることで、工事全体の進捗管理や原価管理の精度を向上させます。運搬データの活用は、i-Construction 2.0を推進する上で重要な要素です。


稼働率最大化の基本の考え方

稼働率・待機時間・サイクルタイムの定義整理

ダンプトラックの稼働率を正確に評価するためには、「稼働率」「待機時間」「サイクルタイム」といった指標の定義を明確にすることが重要です。稼働率は、実際に走行している時間の割合。待機時間は、積み込みや荷下ろし、信号待ちなどで停止している時間。サイクルタイムは、1回の運搬にかかる全時間です。

運搬ルート最適化と動態管理アルゴリズム

ダンプトラックの運行ルートを見直してみましょう。無駄な走行距離を削減し、燃費効率を高める上で非常に重要です。運行管理システムに搭載された「動態管理アルゴリズム」は、リアルタイムの位置情報や交通状況、現場の状況を考慮し、最適なルートを自動で提案します。また、複数のダンプが同時に運行する場合、それぞれの車両が最も効率的に動けるような配車計画を立てられます。

積載最適化・過積載抑制の設計手法

ダンプトラックの積載量も考えられるでしょう。積載量が少なすぎると運搬回数が増え、多すぎると過積載となり、事故や車両への負担増大、法規制違反のリスクが生じます。3次元データから発生土量の予測を行い、ダンプの積載量を適切に管理する設計手法を導入しましょう。過積載を抑制しつつ、最大の積載効率で運搬することが求められます。

拠点配置・転回場設計と運搬効率

土砂の積み込み・荷下ろしを行う拠点や、ダンプがUターンする転回場の配置は、運搬効率に大きく影響します。3次元データを活用し、現場の地形や工事の進捗状況に合わせて、最適な拠点配置や転回場を設計しましょう。ダンプの走行距離や待機時間を短縮し、サイクルタイムを最小限に抑えられます。

指標モニタリングとリアルタイムアラート設計

設定した稼働率、待機時間、サイクルタイムといった指標を、運行管理システムでリアルタイムにモニタリングしましょう。特定のダンプが長時間待機している場合や、サイクルタイムが平均より大きく遅れている場合に、自動でアラートを生成し、管理者へ通知する設計が有効です。リアルタイムアラートは、問題の兆候を早期に発見し、迅速な対応を可能にすることで、運搬効率の低下を防ぎます。


GPS、API、AI、フェイルセーフ設計など…一緒に進めるとよりDXが進みます

GPS/IoTセンサーによるリアルタイム位置把握

ダンプトラックのリアルタイムな位置情報を正確に把握するためには、GPS(全地球測位システム)を活用しましょう。車両の正確な位置を特定し、IoTセンサーはエンジンの稼働状況や燃料消費量などを収集します。データを運行管理システムに集約することで、全ての車両の動態を地図上で可視化できます。リアルタイムの位置把握は、最適な配車計画や、緊急時の対応を可能にします。

通信インフラ・オフライン対応設計

建設現場は、山間部や地下など、通信環境が不安定な場所も少なくありません。運行管理システムを導入する際は、現場の通信インフラを整備するとともに、オフライン環境でもデータが記録できる「オフライン対応設計」が重要です。通信が途切れても、車両の走行履歴や作業状況がシステムに一時保存され、通信が回復した際に自動で同期される機能は、現場での運用継続性を確保します。

API連携・データ統合基盤の設計

運行管理システムとICT施工システム、BIM/CIMシステム、原価管理システムなど、複数のシステム間でデータを連携させるためには、「API連携」や「データ統合基盤」を使えるとベスト。各システムが持つAPIを通じてデータを連携させ、一元的に管理できる基盤を構築しましょう。データの二重入力を防ぎ、各システムの情報を統合して分析することが可能になります。

予測モデル・AIによる運行パターン最適化

蓄積された運行データを機械学習やAIで分析することで、ダンプトラックの運行パターンをさらに最適化できます。AIは、過去の交通状況、天候、現場の土量発生パターンなどを学習し、将来の運行スケジュールやルートを予測します。この予測モデルを活用することで、渋滞を回避したり、待機時間を最小限に抑えたりすることが可能になります。AIによる運行パターン最適化は、人間の経験だけでは難しい高度な効率化を実現します。

異常検知・フェイルセーフ設計

運行管理システムには、異常検知機能と「フェイルセーフ設計」を組み込むことが重要です。
例えば特定のダンプがルートから大きく逸脱した場合や、予定時刻を大幅に超過した場合に、システムが自動でアラートを生成し、管理者へ通知します。また、システムの一部に障害が発生した場合でも、運搬業務全体が停止しないよう、予備システムへの自動切り替えや、手動での運用に切り替えられるようなフェイルセーフ設計が必要です。


まとめ

導入には、通信環境やコスト、そして従業員の理解といった課題も伴いますが、まずはできることを一緒に進めていきましょう!

PAGE TOP