建設業界の課題と考えられる、2024年問題や人手不足、資材価格の高騰は「デジタル運行管理」によって解決できます。本記事では、紙ベースの運行管理が抱える問題点から、デジタル運行管理への移行で得られるメリット、そして導入を成功させるためのステップを詳しく解説します。
紙日報・手配プロセスにある”非効率さ”と”影響”
紙日報運用が抱える手間とミスの実態
紙媒体での日報運用は、多くの手間とミスの原因となります。ドライバーは走行距離、積載量、作業時間などを手書きで記録し、管理者はその日報を回収し、手作業でデータ入力を行います。文字の判読ミス、入力ミス、転記ミスなどが発生しやすく、正確なデータ収集を妨げます。日報の回収や集計作業に多くの時間が割かれ、管理工数が増大する原因となります。
手配業務の電話・FAX依存と待機・ロス時間の発生
ダンプの手配業務が電話やFAXに依存している現場では、多くの無駄が発生しています。現場からの急な変更や追加依頼に対し、電話での連絡は時間のロスを生みます。FAXでは情報の確認に手間がかかります。手配の遅れや誤解は、ダンプの待機時間を増加させたり、必要な資材が届かないといった事態を引き起こしたりします。
ダンプ車両稼働率低下につながる可視化不足
どのダンプが今どこにいて、何をしているのかが「可視化」されないと、非効率なルート選択や、積み込み・荷下ろし場所での不必要な待機が発生しやすくなります。可視化できていないのは、ダンプの稼働率低下に直結し、限られた車両を最大限に活用できていない状態を生み出します。
現場・施工管理・運送業者間の情報断絶
現場、施工管理、そして運送業者間で情報がスムーズに共有されません。各々がバラバラの情報を持ち、最新の状況が共有されない「情報断絶」の状態が生じがちです。これにより、現場の急な変更が運送業者に伝わらなかったり、施工管理者がダンプの到着時刻を正確に把握できなかったりといった問題が発生し、手戻りやトラブルの原因となります。
デジタル運行管理への移行で変わる運搬プロセス
紙日報や電話・FAXから、デジタル運行管理へと移行することで劇的に変化します。
メリットは、効率化だけでなく、コスト削減や安全性向上にも及びます。
運行日報のペーパーレス化と自動データ取得の利点
デジタル運行管理システムを導入すると、紙の日報は不要となり、「ペーパーレス化」が実現。ドライバーはタブレットやスマートフォンから運行データを直接入力したり、GPSやIoTセンサーが自動で走行距離、積載量、稼働時間などを取得し、システムへ送信。「自動でのデータ取得」は、手書きの手間を省き、入力ミスをなくし、管理工数を大幅に削減します。
配車・手配業務のリアルタイム化と動態モニタリング
配車や手配業務をリアルタイムで管理。現場はスマートフォンやPCから直接ダンプの配車を依頼でき、運送業者はその依頼を即座にシステムで確認・承認できます。システム上の地図で各ダンプの現在位置や稼働状況を「動態モニタリング」できるため、現場はダンプの到着時刻を正確に把握でき、運送業者は状況に応じた柔軟な配車調整が可能となります。
クラウド管理による手配ミス・伝達漏れゼロの仕組み
運行管理システムは、全ての情報をクラウド上で一元管理します。現場、施工管理、運送業者の間で情報がリアルタイムで共有され、「手配ミス」や「伝達漏れ」がゼロに近づきます。配車依頼、運行ルート、資材の種類、到着時刻などの情報は、常に最新のものが関係者全員に共有されるため、認識の齟齬によるトラブルを未然に防ぎます。
導入ステップと実践テクニック
デジタル運行管理を導入し、紙日報や手配の課題を解決するためには、段階的なアプローチと実践的なテクニックが必要です。ここでは、その具体的なステップを見ていきましょう。
現状分析：紙日報・手配フローの可視化から始める
デジタル運行管理の導入を始める前に、まずは現在の「紙日報・手配フロー」を詳細に「可視化」しましょう。どのような情報が、誰から誰へ、どのような方法で伝えられているのか、どのプロセスで時間がかかっているのか、どこでミスが発生しやすいのかを洗い出します。この現状分析は、システムの導入によって解決すべき課題を明確にし、導入効果を最大化するための第一歩となります。
パイロット導入で手配・日報の標準化を設計
いきなり全社的にシステムを導入するのではなく、特定の現場や一部のダンプ車両で「パイロット導入」を行いましょう。新しいデジタル日報の入力方法や、配車・手配のプロセスを試行し、問題点を洗い出します。現場の意見を吸い上げながら、効率的で使いやすいフローを設計してみましょう。
運行管理システム選定とクラウド／オンプレ判断
自社に最適な「運行管理システム」を選定する際は、機能、コスト、サポート体制などを比較検討しましょう。システムが「クラウド型」か「オンプレミス型」かは重要な判断ポイントです。
クラウド型は初期費用を抑えられ、どこからでもアクセスできる利便性がありますが、月額費用が発生します。オンプレミス型は自社でシステムを構築するため、初期費用は高額ですが、カスタマイズ性が高いという特徴があります。
定着化と拡張化：KPI設定・改善サイクルの構築
システム導入後も、その効果を継続的に高めるためには、「定着化」と「拡張化」が重要です。具体的な目標として「KPI（重要業績評価指標）」を設定し、システムの利用状況や効果を定期的に測定しましょう。日報作成時間の短縮率や、ダンプ待機時間の削減率などです。これらのKPIを基に、運用方法の改善やシステムの機能追加を検討する「改善サイクル」を構築することで、長期的なDX推進へと繋げられます。
運行データ活用と次の成長へつなげる指標設計
運行データは、企業の次の成長へと繋げられます。
稼働率・待機時間・空車率を可視化する指標設計
デジタル運行管理システムが収集するデータから、「稼働率」「待機時間」「空車率」といった指標を可視化しましょう。稼働率は、ダンプが実際に運搬作業に従事している時間の割合。待機時間は、積み込みや荷下ろし、渋滞などで停止している時間。空車率は、荷物を積まずに走行している時間の割合です。
定期的にモニタリングすることで、運搬プロセスのどこに改善の余地があるのか、客観的に把握できます。
手配回転数・走行距離・稼働時間の相関分析
「手配回転数」「走行距離」「稼働時間」の相関分析を行いましょう。特定のルートや時間帯で手配回転数が低い原因が、長すぎる走行距離や過度な待機時間にあることを突き止められます。AIを活用した分析ツールを使えば、これらの複雑な相関関係を効率的に解析し、運搬効率を阻害している要因を特定できます。
運行データ×施工進捗データ連携による効率改善
運行データを、ICT施工システムから得られる「施工進捗データ」と連携させることで、工事全体の効率改善を図れます。ICT建機が掘削した土砂量とダンプの運搬量をリアルタイムで比較し、土砂の発生量に対してダンプの配車が不足している場合に、自動で追加配車を提案する仕組みを構築できます。
異常検知・アラート運用で手配遅延を未然防止
運行管理システムには、「異常検知・アラート運用」機能を搭載しましょう。特定のダンプが予定ルートから大きく逸脱した場合、長時間停止している場合、あるいは到着予定時刻を大幅に超過している場合などに、システムが自動で管理者やドライバーにアラートを送信します。手配遅延やトラブルの兆候を早期に発見し、管理者からの迅速な指示や対応によって、問題を未然に防ぐことが可能になります。
得られたデータを基にした将来的な自動運搬・AI導入視点
デジタル運行管理で得られた膨大な運行データは、将来的な「自動運搬」や「AI導入」のための貴重な資産となります。蓄積された運行パターン、現場の状況、交通情報などのビッグデータをAIが学習することで、高度な運行予測モデルや、自動運転ダンプを制御するためのアルゴリズム開発に繋げられます。
まとめ：デジタル運行管理で紙日報・手配の課題を解決し、建設DXを推進
ダンプの「紙日報」や「手配」業務のアナログな運用は、ボトルネックとなっているのかもしれません。デジタル運行管理によって蓄積されたデータは、将来的に企業の資産となります。始めるなら今から！ 一緒に取り組みましょう。
