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中小建設業向け施工管理ツール選びの決定版|コスト・機能・サポート体制で比較するポイント

施工管理ツールは多種多様ですが、共通する基本構成と、選定時に比較すべき機能軸があります。自社のニーズに合ったツールを見つけるために、これらのポイントを理解しましょう。

工程管理・日報・写真管理・原価管理の4本柱

施工管理ツールの基本機能は、主に「工程管理」「日報」「写真管理」「原価管理」の4本柱で構成されます。自社の業務フローに適しているかを確認しましょう。

工程管理機能 ガントチャートなどで全体の進捗状況を可視化し、遅延を早期に発見
日報機能 現場の作業内容や進捗をデジタルで記録し共有
写真管理 工事写真を時系列で整理し、証拠として活用
原価管理 資材費や労務費をリアルタイムで把握し、予算と実績を比較

クラウド連携とモバイル対応

現代の施工管理ツールでは、「クラウド連携」と「モバイル対応」が必須です。
クラウド連携で、データはインターネット上に保存され、どこからでもアクセス可能。スマートフォンやタブレットからの「モバイル対応」は、現場作業員がその場で日報入力や写真アップロードを行えるため、大幅な効率化に繋がります。オフィスに戻ってからの事務作業が不要となり、労働時間削減にも貢献します。

チャット・掲示板などコミュニケーション機能はあるか

現場とオフィス、あるいは協力会社との円滑なコミュニケーションも大事ですね。施工管理ツールに搭載されている「チャット」や「掲示板」といったコミュニケーション機能は、電話やFAXに代わる情報共有ができます。質問や指示、情報共有がリアルタイムで行われることで、認識の齟齬を防ぎ、手戻りを減少させます。

電子黒板・図面共有など現場データ

現場で直接使う機能として、「電子黒板」や「図面共有」機能の有無も重要な比較軸です。
電子黒板アプリは、工事写真に直接文字や寸法を書き込み、撮影と同時に情報を記録・共有できます。また、最新の図面データをクラウド上で共有し、モバイル端末で閲覧・編集できる機能は、現場での作業効率を大きく高めます。

API/外部ツール連携ができるか

導入を検討する際は、「API連携」や「外部ツール接続」の有無も確認しましょう。API連携機能があれば、現在使っている会計ソフトやCADソフト、あるいは別のDXツールとデータを連携できます。


コストで比較する施工管理ツール選びの考え方

施工管理ツールを選ぶ際、機能だけでなく「コスト」も重要な判断基準です。単に価格の安さだけでなく、費用対効果を総合的に評価する考え方を持つことが成功に繋がります。

初期費用・月額費用・ユーザー単価の違い

施工管理ツールのコストは、大きく「初期費用」「月額費用」「ユーザー単価」の3つに分けられます。初期費用は導入時に一括でかかる費用、月額費用は毎月発生する利用料、ユーザー単価は利用人数に応じて変動する費用です。企業規模や利用人数によって最適な料金体系は異なります。例えば、少人数での利用ならユーザー単価が安いツール、大人数なら定額制が有利など、自社の状況に合わせて比較検討しましょう。

従量課金 vs 定額制の向き不向き

料金体系には「従量課金制」と「定額制」があります。従量課金制は、利用したデータ量や機能、ユーザー数に応じて費用が変動するため、利用が少ない場合はコストを抑えられますが、利用が増えると費用も高くなる可能性があります。定額制は、一定の範囲内で使い放題のため、費用が予測しやすいメリットがあります。自社の利用頻度やユーザー数の変動を見込み、どちらの料金体系が自社に向いているかを見極めることが重要です。

クラウド型とオンプレミス型の費用構造差

施工管理ツールには「クラウド型」と「オンプレミス型」があります。クラウド型は、自社でサーバーを持つ必要がなく、初期費用を抑えられますが、月額費用が発生します。一方、オンプレミス型は、自社でサーバーやシステムを構築するため、初期費用は高額になりますが、ランニングコストを抑えられる可能性があります。中小企業には初期費用を抑えられ、メンテナンスの手間が少ないクラウド型が現実的な選択肢となることが多いです。

無料トライアル・段階導入のコツ

施工管理ツールの選定で失敗しないためには、「無料トライアル」を積極的に活用しましょう。実際に現場で使ってみることで、ツールの操作性や機能が自社の業務に合っているかを確認できます。

ROI(投資対効果)で見る“高くても得”な導入判断

ツールの導入費用を検討する際、「ROI(投資対効果)」の視点が重要です。価格の安さだけで判断せず、導入によって得られる効果(工期短縮、人件費削減、生産性向上など)を金額に換算し、費用対効果を総合的に評価しましょう。初期費用が高くても、長期的に見て大きな効果をもたらすツールであれば、結果的に「高くても得」な投資となる可能性が高いです。


サポート・運用体制で差が出る“定着力”のポイント

施工管理ツールは、導入すれば終わりではありません。現場で実際に使われ、定着して初めて効果を発揮します。そのため、「サポート・運用体制」は、ツール選定において非常に重要なポイントとなります。

導入支援と教育コンテンツの充実度をチェック

施工管理ツールを導入する際、ベンダーからの「導入支援」と「教育コンテンツの充実度」は、その後の定着に大きく影響します。初期設定のサポート、操作マニュアル、オンライン研修、動画コンテンツなど、従業員がスムーズにツールを使いこなせるようなサポートが提供されているかを確認しましょう。特にITリテラシーが高くない従業員が多い中小建設業では、手厚い導入支援とわかりやすい教育コンテンツが不可欠です。

現場担当者が使えるUI・UX設計の重要性

施工管理ツールは、現場で働く監督や作業員が日常的に使うものです。そのため、「現場担当者が使えるUI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)設計」は極めて重要です。直感的でわかりやすい操作画面、最小限の入力で済む仕組み、モバイル端末での使いやすさなどが求められます。複雑すぎる機能や操作性の悪いツールは、現場での定着を妨げ、結果的に導入失敗に繋がる可能性があります。

カスタマーサクセスチームの存在と対応速度

導入後の疑問点やトラブルに対し、「カスタマーサクセスチームの存在」と「対応速度」は、運用の安定性を左右します。専門知識を持った担当者が、迅速かつ的確にサポートを提供してくれるかを確認しましょう。電話、メール、チャットなど、複数の問い合わせチャネルが用意されているか、営業時間や対応時間もチェックポイントです。手厚いサポート体制は、現場が安心してツールを使い続けるための重要な要素です。

アップデート頻度と法制度対応力の違い

施工管理ツールは、一度導入したら終わりではありません。建設業界のニーズや技術の進化、そして法制度の変更(例:2024年問題など)に対応するため、アップデート頻度と法制度対応力は非常に重要です。ベンダーが定期的に機能改善や新機能追加を行っているか、また、最新の法制度に迅速に対応する体制があるかを確認しましょう。常に最新の状態でツールを使えることが、長期的な効果維持に繋がります。

導入後の“放置”を防ぐ社内体制づくり

施工管理ツールは、導入後も継続的に活用されなければ意味がありません。「導入後の“放置”を防ぐ社内体制づくり」が重要です。具体的には、ツールを推進する担当者を任命し、定期的な利用状況のチェックや、現場からのフィードバック収集を行う仕組みを構築しましょう。また、ツールの活用状況をKPIとして設定し、従業員のモチベーションを維持するための取り組みも有効です。社内全体でDX推進への意識を高めることが、ツールの定着に不可欠です。


中小建設業がツール選定で失敗しないための5ステップ

施工管理ツールの選定で失敗しないためには、計画的で体系的なアプローチが必要です。ここでは、中小建設業が実践すべき5つのステップを紹介します。

Step1:現場課題を“見える化”する

施工管理ツール選定の最初のステップは、「現場課題を“見える化”する」ことです。現在の紙・電話・FAXでの管理において、どのような非効率があるのか、どこで時間がかかっているのか、どのようなミスが発生しやすいのかを具体的に洗い出しましょう。
現場の監督や作業員へのヒアリング、業務フローの分析などを通じて、解決すべき喫緊の課題を明確にすることが、最適なツール選定の出発点となります。

Step2:必要機能と不要機能を整理する

次に、「必要機能と不要機能を整理する」ステップです。見える化された課題を解決するために、どのような機能が必要なのかを具体的にリストアップしましょう。一方で、高機能なツールほど費用も高くなる傾向があるため、自社にとって本当に必要な機能と、現時点では不要な機能を明確に区別することが重要です。この段階で優先順位をつけることで、機能過多によるコスト増大や、操作性の複雑化を避けることができます。

Step3:試用・比較・ユーザー意見の収集

リストアップされた必要機能を持つツールの中から、いくつか候補を絞り込み、「試用・比較・ユーザー意見の収集」を行いましょう。積極的に「無料トライアル」を活用し、実際の現場で数日間使ってみます。複数のツールを比較検討する際には、操作性、機能の充実度、クラウド連携の安定性などを評価します。

Step4:導入後の教育・運用フローを整備

最適なツールを選定したら「導入後の教育・運用フローを整備する」ことです。ツールベンダーが提供する導入支援や教育コンテンツを活用し、従業員への操作研修を徹底しましょう。

Step5:データ活用を経営に結びつける

最後のステップは「データ活用を経営に結びつける」ことです。施工管理ツールによって蓄積された工程管理データ、原価管理データ、日報データなどを定期的に分析しましょう。KPIを設定し、進捗状況やコスト、労働時間の変化を可視化します。


まとめ:中小建設業の未来を拓く施工管理ツールの賢い選び方

ツール選定で失敗しないためには、まず「現場課題の見える化」から始め、必要な機能を整理し、徹底的に比較検討。導入後は教育と運用フローを整備し、蓄積されたデータを経営に結びつけることで、持続的な成長を実現できます。考えて活用できることで、建設業界全体の変革を牽引する存在となれるはずです。

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