建設現場を支えるダンプ事業者さん、労働時間短縮という形で影響はありませんか。この危機は同時に、業界全体のDXを加速させる絶好の機会でもあると思っています。
国土交通省が推進するi-Construction 2.0は、建設プロセス全体のサプライチェーンを最適化することを目指しています。その中でも、土砂や資材の運搬を担う「運行管理」のデジタル化は、2024年問題に対応し、生産性を向上させるための重要な鍵となります。
この記事では、i-Construction 2.0が描く建設物流の未来像を解説します。
目次
1. なぜ今、建設業の運行管理?
建設現場の運行管理は、これまでアナログな手法に頼ることが多く、非効率な業務が常態化していました。ただ、業界を取り巻く環境が厳しさを増す中、従来のやり方ではもはや立ち行かなくなっています。
2024年問題が突きつける運送業者の労働時間削減
2024年4月からの働き方改革関連法の適用は、建設現場だけでなく、ダンプ運送業者にも大きな影響を及ぼしています。特にドライバーの時間外労働に上限が設けられたことで、従来の長時間労働を前提とした運送スケジュールでは、必要な土砂や資材を現場に届けることが難しくなりました。運送業者が労働時間を守るためには、より効率的な運行管理が不可欠です。ICTを活用した運行管理は、この難局を乗り越えるための具体的な解決策となります。
慢性的な人手不足とドライバー高齢化の深刻化
建設業界と同様に、運送業界も深刻な人手不足とドライバーの高齢化に直面しています。若年層のドライバーが減り、経験豊富なベテランドライバーが引退していく中で、ダンプの手配はますます困難になっています。このような状況で、アナログな配車計画や紙での日報管理に頼っていては、車両の稼働率を最大限に引き出すことはできません。運行管理のデジタル化は、少ない人数で効率的に業務を遂行し、ドライバーの負担を軽減することで、人材の定着にも繋がるでしょう。
アナログな管理手法が招く非効率なダンプ手配
従来のダンプ手配は、電話やFAXに頼ることが多く、現場管理者と運送業者の間でリアルタイムな情報共有が難しいという課題がありました。現場の状況が急に変わった際、手配の変更やキャンセルに手間がかかり、ダンプの待ち時間が発生することも少なくありませんでした。こうした非効率なやり方は、現場全体の生産性を低下させるだけでなく、運送業者にとっても無駄な待機時間となり、収益悪化の原因となっていました。

2. i-Construction 2.0が描く「建設物流の全体最適」
国土交通省が推進するi-Construction 2.0は、建設生産プロセス全体の生産性向上を目指すものです。その理念は、現場の施工だけでなく、資材や土砂の運搬といった「物流」も含まれます。運行管理のデジタル化は、このi-Construction 2.0が目指す「全体最適」を実現するための重要な要素です。
BIM/CIMモデルと連携する運行管理の未来
BIM/CIMは、3次元データに様々な情報を付加し、設計から施工、維持管理までを一元管理するシステムです。このBIM/CIMモデルと運行管理システムが連携すれば、建設物流はより高度に最適化されます。例えば、BIM/CIMモデルから必要な土砂や資材の数量、搬入日時、搬入場所といった情報を運行管理システムが自動で受け取り、最適なダンプ手配や配車計画を立案できるようになります。これにより、手作業での情報入力の手間が省け、ミスの削減にも繋がります。
ICT施工と運行管理のシームレスな連携
ICT施工は、3次元設計データをICT建機に読み込ませて自動で作業を行うものです。このICT施工と運行管理システムがシームレスに連携すれば、現場の生産性は飛躍的に向上します。例えば、ICT建機が掘削した土砂の量をリアルタイムで運行管理システムに送信し、必要なダンプの台数を自動で調整できます。これにより、ダンプの待ち時間がなくなり、現場の作業効率と運送業者の収益性の両方を高めることが可能になります。
国土交通省が推進する「DX化」の流れ
i-Construction 2.0は、建設業界全体のDX化を加速させるための強力な指針です。国土交通省は、ICT活用工事に対する積算要領の改定や、デジタル技術導入への補助金・支援制度を設けることで、企業のDX推進を後押ししています。この流れは、現場の施工だけでなく、運行管理や労務管理といった周辺業務のデジタル化も促します。企業がこの国のDX化の流れに乗り遅れないためには、運行管理のデジタル化も重要な戦略の一つとなります。
3. ICT運行管理が解決するダンプの具体的な課題
運行管理のICT化は、ダンプ運送業者と現場管理者の両方が抱える具体的な課題を解決する力を持っています。ここでは、特に課題の大きい「動態管理」「過積載対策」「事務作業」に焦点を当て、その解決策を詳しく見ていきましょう。
リアルタイム動態管理とGPSによる最適な配車計画
ICT運行管理システムを導入すれば、ダンプに搭載されたGPSから車両の現在地や走行状況をリアルタイムで把握できます。これにより、現場管理者は、どの車両が現場に向かっているか、到着まであとどれくらい時間がかかるかなどを正確に知ることができ、現場でのダンプの待ち時間を減らせます。また、運送業者は、車両の空き状況をリアルタイムで把握できるため、現場からの急な依頼にも迅速に対応でき、最適な配車計画を立てることで、車両の稼働率と収益性を向上させられます。
車載重量計と連携した過積載対策
過積載は、ダンプ運送における重大なコンプライアンス違反です。従来の目視や手作業でのチェックでは、過積載を完全に防ぐことは困難でした。
ICT運行管理システムと、車両に後付けできる車載重量計を連携させれば、積載量をリアルタイムで把握し、規定重量を超過した際にドライバーや管理者へ自動でアラートを送信できます。これにより、ドライバーは積載状況を常に意識しながら運転でき、過積載を未然に防ぐことが可能です。法令違反のリスクを回避し、企業の信頼性を高める上で非常に有効な対策となります。
電子マニフェスト導入による事務作業の効率化
産業廃棄物の運搬には、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の作成・管理が義務付けられています。従来の紙マニフェストは、複数の業者が手書きでやり取りするため、転記ミスや紛失のリスクがあり、事務作業の大きな負担となっていました。電子マニフェストを導入すれば、パソコンやスマートフォンでマニフェストの情報を入力・管理できます。運搬状況もシステム上でリアルタイムに追跡できるため、事務作業の効率が大幅に向上し、コンプライアンスも強化されます。

まとめ:運行管理DXでダンプの課題を解決する
建設業界が直面する2024年問題や人手不足といった課題を乗り越えるためには、現場の施工だけでなく、運行管理を含めた建設プロセス全体のDXが不可欠です。国土交通省が推進するi-Construction 2.0は、まさにこの「全体最適」を目指すものです。運行管理のデジタル化は、建設業界が持続可能な発展を遂げるための、重要な戦略なのです。