廃棄物管理の効率化…大きな課題ですね。紙マニフェストの運用は、事務作業の負担増大や紛失リスクを招きます。この課題を解決するのが、電子マニフェストと運行管理の連携です。
1. 「電子マニフェスト」とは?
建設現場から排出される産業廃棄物の適正処理は、企業の社会的責任(CSR)の観点からも、法律で厳しく義務付けられています。従来の紙マニフェスト運用には多くの課題がありましたが、電子マニフェストの導入は、その課題を解決し、建設DXを考える上では必要不可欠な要素となっています。
電子マニフェストの基本と従来の紙マニフェストの課題
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、廃棄物が適正に処理されたことを証明する重要な書類です。従来は紙媒体で運用されていましたが、手書きや郵送といったアナログなやり方では、伝票の記入ミス、紛失、保管スペースの確保といった課題がつきものでした。また、交付から処理完了までのステータスをリアルタイムで把握することが難しく、現場管理者や経理担当者の事務作業の大きな負担となっていました。
法令遵守(コンプライアンス)と排出事業者責任
排出事業者は、廃棄物が最終処分されるまでの一連の流れを把握し、管理する責任があります。この排出事業者責任を果たすためには、マニフェストを適切に運用することが法律で義務付けられています。電子マニフェストは、システム上で廃棄物の運搬や処理の状況をリアルタイムで追跡できるため、法令遵守を徹底し、不法投棄のリスクを低減する上で非常に有効です。紙の伝票を紛失すると罰則の対象となる可能性もありますが、電子マニフェストであればそのリスクも回避できます。
事務負担の軽減とコスト削減への期待
紙の伝票の記入や郵送、保管、そして5年間の保管義務といった手間が不要になります。システム上でデータが自動で入力・管理されるため、経理担当者や現場管理者の負担を大きく減らせます。また、紙のコストや郵送費なども削減でき、コストダウンにも繋がります。
データの透明性とトレーサビリティの向上
排出事業者が登録した情報が、運搬業者、処分業者と共有される仕組みになっています。システム上で廃棄物の運搬状況や処分状況をリアルタイムで追跡できるため、データの透明性とトレーサビリティ(追跡可能性)が飛躍的に向上します。廃棄物がいつ、誰によって、どこに運ばれ、どのように処分されたのかを正確に把握でき、不法投棄の防止に役立ちます。このデータはいつでもシステム上で確認できるため、監査対応もスムーズに行えます。

2. 運行管理と電子マニフェストを連携させるメリット
運行管理システムと連携させることで、さらに大きなメリットが生まれます。
マニフェスト情報の自動入力と事務作業の削減
運行管理システムと電子マニフェストが連携していれば、運行管理システムで入力した運搬車両の情報やドライバーの情報が、電子マニフェストシステムに自動で反映されます。両方のシステムに同じ情報を二重で入力する手間が不要になり、事務作業が大幅に削減されます。特に、多数の車両を抱える運送業者にとっては、この連携は大きな業務改善となります。
運搬状況のリアルタイム管理と情報連携の強化
ICT運行管理システムのGPS機能は、ダンプの現在地や運搬状況をリアルタイムで把握できます。この情報が電子マニフェストシステムと連携すれば、現場管理者や排出事業者は、廃棄物がいつ、どのルートで運ばれているかを正確に把握できます。また、運搬が完了した際の情報も自動でシステムに登録されるため、情報連携のタイムラグがなくなり、業務全体の効率が向上します。
排出事業者、運搬業者、処分業者のシームレスな情報共有
システムは、排出事業者、運搬業者、処分業者の3者が情報を共有するプラットフォームです。運行管理システムと連携すれば、現場での廃棄物積み込み完了、運搬中、処分場到着といった一連のステータスを、関係者全員がリアルタイムで確認できるようになります。電話やFAXでの進捗確認が不要になり、コミュニケーションがより円滑になります。
3. 電子マニフェスト連携が拓く、持続可能な建設業の未来
企業の信頼性向上とコンプライアンス強化
廃棄物の処理状況をシステム上で正確に記録し、データの透明性を確保します。これにより、企業は排出事業者責任を確実に果たし、コンプライアンスを強化できます。法令を遵守し、環境に配慮した企業としての姿勢は、発注者からの信頼を高め、企業のブランドイメージ向上にも繋がります。これは、安定的な受注に不可欠な要素です。
労働環境の改善と働き方改革への貢献
運行管理の連携は、煩雑な事務作業を自動化し、現場監督や経理担当者の負担を大きく軽減します。これにより、労働時間が短縮され、2024年問題に対応できる柔軟な働き方を実現できます。また、ダンプ運送業者にとっても、紙の伝票作成や保管の手間がなくなるため、ドライバーの負担が軽減され、労働環境の改善に貢献します。
建設業界全体のサプライチェーン最適化
電子マニフェストと運行管理の連携は、建設業界のサプライチェーン全体を最適化します。廃棄物の排出から処分までの一連の流れがデジタルデータで可視化されるため、無駄な運搬や待機時間をなくすことができます。これは、運送効率を向上させ、燃料費の削減やCO2排出量の削減にも繋がり、環境負荷の低減にも貢献します。i-Construction 2.0が目指す「建設生産システム全体の最適化」に、電子マニフェストと運行管理の連携は不可欠な要素です。

まとめ:電子マニフェスト連携で事務負担を軽減し、コンプライアンスを強化
建設業界における廃棄物管理は、2024年問題や人手不足といった課題が深刻化する今、DXによる効率化が求められています。その鍵となるのが、電子マニフェストと運行管理システムの連携です。運行管理の連携は、建設業界が持続可能な発展を遂げ、社会からの信頼に応えるための、最も有効な戦略と言えるでしょう。