令和8年4月施行|改正トラック法(貨物自動車運送事業法)が
事業者に与える影響と実務対応ポイント
今回の改正では、①書面交付義務・実運送体制管理簿の作成義務の拡大、②委託回数の制限、③白トラ利用の罰則強化という3つの大きな変更点が盛り込まれています。自社が荷主・元請・利用運送事業者のいずれの立場であっても、対応を誤ると法令違反につながる可能性があります。この記事では、改正内容の概要と、実務で押さえておくべき注意点を整理して解説します。
改正トラック法(貨物自動車運送事業法)の改正背景
2024年問題として広く知られるように、ドライバーへの時間外労働の上限規制が適用されたことで、物流業界は深刻な人手不足と輸送力の低下に直面しています。その根本には、ドライバーの賃金水準の低さと、複雑な多重下請け構造による適正な運賃が行き渡りにくい商慣行があります。
こうした状況を改善するため、令和7年6月の法改正では、取引の透明化・多重下請けの抑制・不正利用への罰則強化という三本柱が設けられました。いずれも現場レベルの契約・管理体制に直接関わる内容であり、経営者から現場担当者まで幅広く影響します。
- 書面交付義務・実運送体制管理簿の作成義務を「利用運送事業者」にも拡大
- 再委託(多重下請け)の回数を2回までに制限する努力義務
- 無許可車両(白トラ)へ運送を委託した荷主等への新たな罰則
改正ポイント①:書面交付義務・実運送体制管理簿の作成義務が「利用運送」にも拡大
これまで書面交付義務(運送申込書・運送引受書のやり取り)は、一般貨物自動車運送事業者(いわゆるトラック事業者)と荷主の間の取引が主な対象でした。今回の改正により、元請けとしてトラックを利用する貨物利用運送事業者にも同様の義務が課されます。
書面交付義務の拡大
荷主から運送委託を受けてトラックを利用する「貨物利用運送事業者(元請け)」が新たに書面交付義務の対象に加わります。これにより、荷主と元請けの間でも12条に基づく書面の授受が必要になります。
実運送体制管理簿の作成義務
多重下請け構造の可視化を図るため、荷主から運送委託を受けてトラックを利用する元請けの貨物利用運送事業者にも、実運送体制管理簿の作成義務が新たに課されます。これは実際に運送を担う事業者の情報を一元管理するための帳簿です。
| 義務の種類 | 改正前の対象 | 改正後の対象 |
|---|---|---|
| 書面交付義務 | 一般貨物自動車運送事業者 | + トラックを利用する貨物利用運送事業者(元請け) |
| 実運送体制管理簿の作成 | 一般貨物自動車運送事業者(元請け) | + トラックを利用する貨物利用運送事業者(元請け) |
また、実運送事業者情報の通知義務も設けられており、委託先の実運送事業者の情報を元請けに通知することが求められます。これらの対応には帳票管理の仕組みを整備することが不可欠です。
改正ポイント②:委託回数を2回までに制限(努力義務)
実運送事業者の適正な運賃収受を確保するため、元請け事業者に対して、再委託の回数を2回までとする努力義務が課されます。
- 荷主からの受託を「ゼロ次」としてカウントし、元請けからの再委託が1次・2次と続く
- 1次請け事業者も、元請けの委託次数の縮減に協力することが求められる
- 取引構造の途中に貨物利用運送事業者が入る場合も委託次数にカウント
- マッチングサービス事業者等が運送契約の取次ぎのみを行う場合はカウント対象外
この規定は「努力義務」であるため、直ちに法的な制裁が科されるわけではありませんが、今後の規制強化に向けた重要な前段です。3次請け・4次請けが常態化している取引構造がある場合は、今のうちに見直しを進めることが重要です。
改正ポイント③:白トラ利用の罰則強化
いわゆる「白トラ」とは、貨物自動車運送事業の許可を持たない自家用車(白ナンバー)を使って有償で運送を行うことを指します。これまでは白トラ自体の規制が中心でしたが、今回の改正では白トラに貨物運送を委託した荷主等も新たに処罰の対象となりました。
| 対象者 | 罰則・措置 |
|---|---|
| 白トラを利用した荷主等 | 100万円以下の罰金 |
| 白トラへの関与が疑われる荷主等 | 「トラック・物流Gメン」による是正指導の対象 |
実務で注意すべき対応チェックリスト
改正内容を踏まえ、自社の立場(荷主・元請け・利用運送事業者)に応じて以下の対応を確認しましょう。
荷主の方へ
- 委託先の運送会社が許可を持つ事業者かどうか確認しているか
- 書面での運送申込・引受の手続きを整備しているか
- 再委託の状況を把握しているか(多重下請けの実態確認)
貨物利用運送事業者(元請け)の方へ
- 荷主との間で12条に基づく書面交付を行っているか
- 実運送体制管理簿の作成体制を整備しているか
- 実運送事業者情報を元請けへ通知する仕組みがあるか
- 委託先の再委託状況を把握し、2次以内に収まるよう調整しているか
- 運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任を行っているか
一般貨物自動車運送事業者の方へ
- 書面交付・運送引受書の様式が最新の要件に対応しているか
- 実運送体制管理簿の記載項目・保存方法を確認しているか
- 1次請けとして、元請けの委託次数縮減への協力体制を整えているか
運行管理のデジタル化で対応負担を軽減する「カタル」
改正への対応で最も現場の負担になるのが、書面の整備・管理・保存の煩雑さです。運送申込書・引受書の作成、実運送体制管理簿への記録、委託先の情報管理——これらをアナログで対応しようとすると、担当者の工数は大きく膨らむため、業界全体で書面化・記録管理のデジタル化が急務となっています。
MIEZ社が提供するダンプトラックに特化した運行管理システム「カタル」は、こうした管理業務の効率化を強力にサポートします。書類管理・動態管理・帳票作成をクラウドで一元管理することで、取引先の許認可情報の確認にも役立てることができます。
- 車両台帳とGPSを紐づけたリアルタイム運行管理
- 入退場・走行履歴の自動記録による帳票作成の効率化
- 現場・ドライバー・管理者間のスムーズな情報共有
- コンプライアンス対応の可視化による元請・荷主への信頼性向上
法改正への対応は、単なるコンプライアンスの問題にとどまりません。書面化・管理体制の整備は、取引先からの信頼を高め、健全な運賃収受の基盤をつくる取り組みでもあります。デジタル化によって対応負担を最小化しながら、改正に確実に対応していきましょう。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 書面交付義務・実運送体制管理簿の作成義務が拡大——元請けとしてトラックを利用する貨物利用運送事業者にも義務が及ぶ。書面様式の整備と管理体制の構築が急務。
- 再委託は2次まで(努力義務)——多重下請けの実態を把握し、構造の見直しを進めることが重要。
- 白トラ利用の荷主にも罰則——最大100万円の罰金。委託先の許認可確認は必須。
- デジタル化で対応負担を軽減——書面化・管理記録の整備はシステム活用で効率化できる。
※ 本記事は令和8年3月時点の情報をもとに作成しています。法令の詳細・個別の解釈については、国土交通省および最寄りのトラック協会にご確認ください。












